つくって終わりでは意味がない
――「Tui Kauri」というブランド名の響きがとても可愛いですね。
上野:
ありがとうございます。
自分の名前に樹木の「樹」という字が入っていることを意識して大きな樹木「kauri(カウリ)」を入れたいなと。「Tui Kauri」は、ニュージーランドの先住民族の言語マオリ語なんですが、「kauri」は日本で例えるなら屋久杉の木のように立派で、樹高50m以上、幹の太さが直径4.4mという巨木です。たとえ雷に打たれても、割けて土の中で朽ちずに化石となるような強い木なんです。普遍的な生命力や大自然のたくましさを連想できる「kauri」。
そして、同じく美しい大自然をイメージできる可愛い生き物のモチーフが寄り添っていたらいいなと思っていたところまさに「tui」がぴったりだと思いました。「tui」は胸に白いぼんぼりのついた花の蜜を主食としている鳥です。
そうして、「Tui Kauri」というブランドが生まれました。
――ロゴマークのデザインも自ら手がけたそうですが、どのようにして生まれたんですか?
上野:
筆記体で「Tui Kauri」と書いてみたり、絵を描いてみたり。5、6時間ぐらい、ずーっと家にあるメモ用紙にアイデアをひたすら描き続けました。最終的に、長く愛されるブランドロゴにしたいという想いから、鳥と樹をシンプルな絵でもイメージできるように、また「T」と「K」の頭文字のみを組み合わせたデザインになったんです。
他にも可愛いロゴもたくさん生まれてきましたが、「これだ!」と思ってからは、迷いはありませんでした。これ以上削ぎ落とすことが出来ない「絶対にこれがいい!」と思えるものができて良かったです。
――アロマキャンドル「MOON」と「SUN」について教えてください。
上野:
精油を、6パーセントもぜいたくに入れて作りました。精油は天然のものなので、ふたをつけています。精油の鮮度を楽しんでいただくために、キャンドルもベストなサイズを選びました。
精油の調合や火を灯す紐の太さなど、実験を繰り返しながら、最後の最後まで使い切っていただけるよう、ひとつずつ手づくりでつくっています。
――パッケージデザインもシンプルで素敵です。
上野:
「SUN」は下から上へ湧き上がるような力強い太陽のフレアのイメージ。また、アクセサリー感があってお部屋にもマッチできれば、インテリアとしても楽しんでいただけるかなと思い、フレアの部分をティアラっぽくデザインしました。
「MOON」は静寂をイメージして、上から下にアクセサリーや宝石、星など、きらめくモチーフをランダムに吊り下げてみました。
最初はゴールドやシルバーで描こうかなとも思ったんですが、ブラックで統一して、よりシンプルなデザインにしています。
――2種類の香りの特徴を教えてください。
上野:
スッキリとリフレッシュしたければミント系、寒いときに身体を温めたいなら柑橘系というように、そのときによって使う香りを選べるところがアロマの魅力です。なので、用途にあわせて使い分けていただけるよう、「SUN」と「MOON」の2種類をつくりました。
「SUN」は出かける前にメイクをして、「よし、行くぞ」という気持ちになれる、太陽のような温かいエネルギーを感じられる香りです。「今日も一日頑張って!」と、みなさんの背中をそっと押す役割になれたらなと。ライムやシナモン、カルダモン、ジュニパーベリー、クローブといった、太陽の仲間の精油を調合しています。
私は、日頃カルダモンやシナモン、クローブは、ハンバーグやカレーをつくるときに入れます。スキッとしていて肉の臭みを取ってくれて、なんかこう自然の大地の香りがしますよね。それに、ライムをプラスしました。柑橘系の中でもオレンジやレモンの精油よりも、ライムが良い調和を生んでくれたので、意外な発見でもありました。
「MOON」はお風呂上がりや眠る前にリセットして、ニュートラルに戻るときなどにピッタリの香りです。「今日も一日お疲れさま!」と浄化や癒やしを与えてくれる、月の白い光のようなイメージでつくりました。ラベンダー、セージ、セイヨウハッカ(ペパーミント)、ユーカリ・ラディアータ、マジョラムなどの月の仲間の精油を調合しています。ユーカリは2種類あって、ユーカリ・ラディアータのほうが私は好きなんです。
――本当にひとつひとつ、ていねいにつくられたんですね。
上野:
火を点けて最初に香る香りがひとつだと奥行きが出ないので、工房の方に教えていただきつつ、さまざまなオイルをブレンドしました。たくさんの香りを嗅いでいるとわからなくなってくるので、コーヒー豆でリセットしながらたくさんの香りを嗅ぎ分けていくのが大変でしたけど、楽しい作業でした。
みなさんにギフトを届けるような、そんな気持ちでつくったので、ぜひ、ふたつの香りを楽しんでいただければと思います。
(3話へつづく)